慶應義塾大学総合政策学部教授・中室牧子氏による著書『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)について、以下のとおり紹介します。

本書は、教育分野に経済学的なアプローチ━━特に統計データや実証研究━━を導入することで、「子どもの学力向上や将来の成功にとって何が有効か」を明らかにしようとする試みです。構成は以下のようになっています。

第1章 他人の “成功体験” はわが子にも活かせるのか?━━データは個人の経験に勝る
第2章 子どもを “ご褒美” で釣ってはいけないのか?━━科学的根拠(エビデンス)に基づく子育て
第3章  “勉強” は本当にそんなに大切なのか?━━人生の成功に重要な非認知能力
第4章  “少人数学級” には効果があるのか?━━科学的根拠(エビデンス)なき日本の教育政策
第5章  “いい先生” とはどんな先生なのか?━━日本の教育に欠けている教員の「質」という概念
補講 なぜ、教育に実験が必要なのか

第1章 他人の “成功体験” はわが子にも活かせるのか?━━データは個人の経験に勝る

第1章では、中室氏の教育観や本書全体の問題意識が明確に示されています。たとえば、子育てに成功した親の体験記を買い求めるといった現象に対して、中室氏は次のように述べています。「どこの誰かが子育てに成功したからといって、同じことをしたら自分の子どもも同じように成功するという保証は、どこにもありません。子どもの成功には、あまりにも多くの要因が影響しているからです」。この点については、私も同感です。個別の成功体験を一般化してしまうことの危うさは、子育てや教育の分野では特に顕著です。

続けて中室氏は、「教育経済学者の私が信頼を寄せるのは、たった1人の個人の体験記ではありません。個人の体験を大量に観察することによって見出される規則性なのです」と述べ、エビデンスにもとづく教育政策の必要性を強調します。ただし、ここには疑問も残ります。教育という営みは非常に複雑で、個々の子どもや環境により影響を受ける要素が多いため、本当に「規則性」を正確に抽出できるのかどうか、慎重に考える必要があるのではないでしょうか。

さらに中室氏は、教育における「科学的な根拠」の重要性を強調し、次のように述べます。

「経済学者は『子どもの目がキラキラするようになった』とか『学校が活気にあふれている』などといった、人によって見方が変わってしまう主観的な表現で『教育に効果があった』といったりはしません。また、自治体や政府の報告書の中にやたらと登場するような、『満足しましたか』と子ども自身に聞いたアンケート調査の集計を『エビデンス』と呼ぶこともありません。あくまで、客観的な数字をもとに事実を示します。」

このような立場には一定の理解ができます。教育政策や制度改革において、主観や印象論ではなく客観的なデータにもとづく検証が必要だという考え方は重要です。しかし、その一方で、教育には数値化できない価値や成果も確実に存在します。子どもの表情、教師と生徒の関係性、学びの充実感などは、数値としては捉えきれないが、教育の本質に深く関わる要素です。そうした非数値的な側面を一括して排除してしまう姿勢には、一抹の危うさを感じます。

いずれにせよ、本書の真価は第2章以降の具体的な事例やデータの分析にこそ表れるはずです。以下では、それらの内容に注目しつつ、議論を進めていくことにしましょう。

第2章 子どもを “ご褒美” で釣ってはいけないのか?━━科学的根拠(エビデンス)に基づく子育て

「テストでよい点を取ればご褒美をあげます」と「本を1冊読んだらご褒美」━━どちらが効果的?

第2章では、子どもの学習に「ご褒美」は効果的かどうかという問いが提示されます。特に、「テストでよい点を取ったらご褒美を与える(アウトプット報酬)」と「本を読んだらご褒美を与える(インプット報酬)」という2つの手法が比較され、それぞれが学力にどのような影響を及ぼすかが検討されています。

ここで紹介されるのが、ハーバード大学のローランド・フライヤー教授によるアメリカ5都市(ニューヨーク、シカゴ、ダラス、ヒューストン、ワシントンD.C.)で実施された大規模な実験1です。この研究の背景には、「教育生産関数(Education Production Function)」という、教育経済学における基本的な分析枠組みがあります。これは、教育における「インプット(投入)」と「アウトプット(成果)」の関係を分析するものであり、本章を理解するための前提知識となります。

フライヤー教授の実験も、この枠組みに基づいて設計されています。具体的には、次の2つのグループが比較されました:

  • アウトプット報酬群(ニューヨーク、シカゴ):
     テストの点数や成績が上がったらご褒美を与える
  • インプット報酬群(ダラス、ヒューストン、ワシントンD.C.):
     本を読む、宿題を終える、制服を着る、学校に出席するといった具体的行動にご褒美を与える

直感的には、テストの点数や成績といった成果(アウトプット)に報酬を与える方が効果的に思えます。しかし、実際の実験結果は逆でした。学力テストの結果が明らかに向上したのは、インプットに対してご褒美を与えた子どもたちだったのです。

西室氏も次のように述べています。

「インプットにご褒美が与えられた場合、子どもにとって、何をすべきかは明確です。本を読み、宿題を終えればよいわけです。一方、アウトプットにご褒美が与えられた場合、何をすべきか、具体的な方法は示されていません。」

これは、子どもたちが成果を出すための方法論(学習戦略)を理解していないままに目標だけを課された場合、その目標達成が困難になるという、ごく自然な結果だと考えられます。西室氏はこの点を、実験後のアンケート結果を引用して補足しています。

「フライヤー教授が実験の後に行ったアンケート調査では、アウトプットにご褒美を与えられた子どもたちは、どうやったら学力が伸びるかについて、あまりよく考えていなかったことがわかりました。」

加えて、ニューヨーク市立大学のロドリゲス准教授による研究では、指導者や先輩が学習の手順や努力の仕方を丁寧に指導した場合、アウトプットに対するご褒美でも学力が向上したという結果が示されています2

「指導者や先輩が、目標のためにどのように努力すべきかについて具体的な道筋を示してくれたからです。」

こうした研究は、「ご褒美」の効果は、その設計や支援体制のあり方によって大きく変わることを教えてくれます。単にご褒美を与えるかどうかではなく、どのような行動に、どのようなかたちで、誰の支援のもとで与えるのかが重要なのです。

さらに言えば、ご褒美の効果は、報酬の「内容」「タイミング」「頻度」「社会的比較」など、さまざまな要因に左右されるため、「子どもをご褒美で釣るのは良いのか悪いのか」という問いには、単純な二者択一では答えられません。

加えて、これらの実験がいずれもアメリカの都市部の特定の層(多くは低所得層)を対象として行われたものであることから、文化や教育制度が異なる日本に結果をそのまま適用することには慎重さが求められます。これは教育研究における「外部妥当性(external validity)」の問題であり、他国の実験結果を導入する際には必ず問われる視点です。

本章が伝えるように、「エビデンス」に基づく教育政策は、感覚や経験だけに頼らない重要な指針となり得ます。しかし同時に、エビデンスには前提条件と限界があるという点を忘れず、文脈や支援環境を踏まえた丁寧な議論が不可欠です。教育は、単なるインプットとアウトプットの機械的な関係ではなく、人間の成長と学びの複雑な過程であることを再確認すべきでしょう。

幼児教育の重要性

第2章では、幼児教育の重要性についても強調されています。とくに「もっとも収益率が高いのは、子どもが小学校に入学する前の就学前教育(幼児教育)である」と断言している点は、やや過剰な一般化に感じられ、慎重な検討が求められます。この主張は、シカゴ大学のヘックマン教授らによる研究業績34を根拠にしています。

本書によれば、教育を経済活動として捉えた場合、教育は将来への「投資」として理解されます。子どもの将来の収入が教育によってどの程度増加するかを「教育の収益率」と表現し、その観点から幼児教育の効果を評価しています。

ヘックマン教授らは、ミシガン州で行われた「ペリー幼稚園プログラム」を題材に研究を進めました。このプログラムは、主に低所得のアフリカ系米国人の3~4歳児に対し、質の高い就学前教育を提供することを目的としています。

本書ではこのプログラムについて次のように説明しています。

「ペリー幼稚園プログラムは、入学資格のある子どもたちのうち、ランダムに選ばれた58人の入園を許可された子ども(=処置群)と、65人の運悪く入園を許可されなかった子ども(=対照群)を比較するという実験によって、その測定が行われました。・・・処置群と対照群の子どもたちの間でどのような差が生まれたのかをみたのが図 16 です。とくに注目すべきなのは、子どもたちが卒業した後━━しかも卒業後のかなり時間がたった後も━━ペリー幼稚園プログラムの効果が持続していたということです5。」

この研究結果は一定の有益な示唆を与えるものですが、同時に重要な留保点も存在します。まず第一に、調査対象となったサンプルサイズが非常に限られており、処置群が58人、対照群が65人と比較的小規模であることが挙げられます。

さらに対象となった子どもたちは、アメリカ・ミシガン州に住む低所得のアフリカ系アメリカ人の3~4歳児という、社会的・文化的に非常に限定された集団である点も重要です。

このように、特定の地域・人種・経済的背景に偏った対象集団の研究結果を、異なる国や文化的文脈にある日本の幼児教育政策や実践にそのまま適用することには慎重であるべきでしょう。したがって、この調査の結果を直接的に日本の教育現場に当てはめることには、相応の疑問が残ると考えられます。

第3章 “勉強” は本当にそんなに大切なのか?━━人生の成功に重要な非認知能力

第3章では、「非認知能力」の重要性が強調されています。ペリー幼稚園プログラムの成果━━たとえば、将来的な学歴・年収・雇用の安定といった面でのポジティブな影響━━は、「認知能力」ではなく「非認知能力」の向上によるものである、というのが本書の基本的な主張です。

この点について、次のような説明がなされています。

「たしかに、ペリー幼稚園プログラムによって、子どもたちの小学校入学後のIQや学力テストの成績は上昇したことがわかっています(図 17 )。しかし、この学力やIQへの効果は、実はごく短期的なものでした。」

「灰色の線で示された処置群と黒色の線で示された対照群のIQの差は、小学校入学前(4~5歳ごろ)にはそれなりに大きかったものの、小学校入学(6歳)とともに小さくなり、ついに8歳前後で差がなくなってしまいます。」

このように、認知能力の効果が短期的であったことから、本書では次のように主張されています。

「ペリー幼稚園プログラムによって改善されたのは、『非認知スキル』または『非認知能力』と呼ばれるものでした。これは、IQや学力テストで計測される認知能力とは違い、『忍耐力がある』とか、『社会性がある』とか、『意欲的である』といった、人間の気質や性格的な特徴のようなものを指します(図 18 )。・・・非認知能力は・・・将来の年収、学歴や就業形態などの労働市場における成果にも大きく影響することが明らかになってきたのです。」

この主張は一見説得力がありますが、いくつかの重要な疑問が浮かび上がります。

まず第一に、ペリー幼稚園プログラムで実施された就学前教育の内容が、本当に十分な質と工夫を備えていたのかどうかが問われるべきです。仮に教育の方法や内容に持続的効果を支えるだけの質が欠けていたとすれば、認知能力の効果が短期で失われたのは、当然の結果とも考えられます。逆に、より高度で継続性のある教育が提供されていれば、学力向上の効果が持続していた可能性も否定できません。

また、認知能力━━すなわち学力やIQのような測定可能な知的能力━━は、就学前の短期間の取り組みだけでは維持しづらく、その後の継続的な学習や環境の支援が不可欠です。この点に着目すれば、「認知能力の効果は続かないから非認知能力を重視すべき」という議論は、少々短絡的に過ぎるのではないかと感じられます。

さらに、「非認知能力」は、就学前教育のみで育まれるものではありません。学校生活や日常の人間関係、クラブ活動や地域社会との関わりなど、多様な場面で自然に養われていく性質のものです。それをあたかも就学前の早期教育だけで決定づけられるかのように述べるのは、因果関係を単純化し過ぎている印象を受けます。

加えて、ペリー幼稚園プログラムの研究には、参加者の規模が小さいこと(処置群58人・対照群65人)に加え、実施地域がアメリカ・ミシガン州の低所得層アフリカ系アメリカ人家庭に限定されていたという強い社会的・文化的バイアスが存在します。こうした限定的な条件のもとで得られた成果を、日本社会にそのまま適用することには慎重であるべきです。これは、まさに本書の補講部分でも触れられていた「外部妥当性(external validity)」の問題に直結します。

また、教育の重要な時期を「就学前」に限定する議論にも違和感があります。人間の成長には段階的な発達課題が存在しており、幼児期のみならず、小学校期、中学校期、高校期と、それぞれの時期に応じた重要な学習機会があります。ある特定の時期だけを「最も重要」と断言するのではなく、長期的視野で教育のプロセス全体を捉えることが重要です。

最後に、「認知能力」と「非認知能力」を明確に切り分けて議論すること自体にも限界があります。たとえば、学校教育においては、国語や算数、体育、総合学習、特別活動などを通じて、知識や技能(認知能力)だけでなく、やる気、協調性、リーダーシップ、粘り強さといった非認知的要素も同時に育まれています。

このように考えると、非認知能力の育成に特化した新たなプログラムを学校に追加導入すべきかどうかについては、授業時間や教育資源の制約も踏まえ、慎重な検討が必要です。既存の教育活動の中で、認知と非認知の両面をどのように効果的に伸ばしていくか、という包括的な視点こそが、今後の教育議論において求められるべきでしょう。

第4章  “少人数学級” には効果があるのか?━━科学的根拠(エビデンス)なき日本の教育政策 (略)

第5章  “いい先生” とはどんな先生なのか?━━日本の教育に欠けている教員の「質」という概念 (略)

補講 なぜ、教育に実験が必要なのか

本書の補講部分では、著者・西室牧子氏が自身の専門分野である統計学と因果推論の視点から、教育における「実験」の重要性について解説しています。西室氏は『「原因と結果」の経済学』(ダイヤモンド社、2017年)の著者でもあり、エビデンスに基づいた政策評価の必要性を一貫して主張してきた人物です。

その中でも特に重視されているのが、ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial: RCT)の手法です。西室氏は次のように述べています。

「経済学者は、教育の因果効果を明らかにするために、実験を行います。この実験の正式名称は、『ランダム化比較試験』(図 39 )といいます。そして、このランダム化比較試験は『政策評価のゴールドスタンダード』と呼ばれ、海外では政策評価のメインストリームとしてその確固たる地位を確立してきました。」

また、近年では「エビデンス」という言葉が一般化していますが、すべてのエビデンスが等しく信頼できるわけではないという点も強調されています。

「明確な根拠がないのにもかかわらず、あたかもエビデンスがあるかのような語り口の記事や報道をあちこちで見かけますが、これらにだまされないためにも、『そのエビデンスが信頼に足るものか』について、自分自身の目で見極められるようになることが重要です。」

そのための基準として、エビデンスの「階層」が紹介されており、最上位に位置づけられるのがランダム化比較試験であるとされています。

「1998年にオックスフォード大学の研究者らを中心に「階層」が提唱されて以降、もっとも階層の高い、信頼に足るエビデンスと定義されているのがランダム化比較試験です。」

「それ以外の方法はランダム化比較試験よりも下位に位置づけられており、中でも専門家や研究者の『意見』や『考え』はもっとも階層の低いエビデンスとして扱われています(図 40 )。」

このように、西室氏はランダム化比較試験を教育政策評価の基準と位置づけつつも、その限界についても率直に触れています。以下に、その問題点が紹介されています。

「しかし、ランダム化比較試験が完全無欠の政策評価かといえば、残念ながら必ずしもそうとはいえません。ランダム化比較試験が抱える技術的な問題については、開発経済学の専門家である東京大学の澤田教授が日本経済新聞の『経済教室』(2011年12月5日)で非常によくまとまった記事を書かれていますので、それを参考にあたらめて論点を整理したいと思います。」

「第1の問題は、ランダム化比較試験対象となっている生徒や学校が、政策介入に反応して行動してしまう可能性があることです。・・・他にも、ある国におけるランダム化比較試験の結果が、他の国で当てはまるかどうかわからないという『外部妥当性の問題』が存在します。さらに、小規模のランダム化比較試験で効果が確認された政策介入を、もっと多くの人々に拡張したら、効果が薄れてしまうという『一般均衡効果』が生じる可能性がある。」

「また、ランダム化比較試験の持つもうひとつの問題に、ある政策介入のもたらす因果効果がわかったとしても、『なぜそうなったか』というメカニズムがよくわからないことが挙げられます。このメカニズムのことを経済学の用語で『内部構造』といいます。内部構造が不明であるからこそ、外部妥当性の問題や一般均衡の問題が起こると考えられるのです。」

このように、いくら方法論的に洗練されていても、対象となる人々の条件や社会的背景、そして同じような効果が他の場面でも再び得られるかどうか(再現性)といった点で、多くの課題があることが明らかです。特に、小規模な実験で得られた成果が、より多くの人々や地域に広げた場合にそのまま維持されるとは限らず、政策として広く展開すると効果が薄れてしまう「一般均衡効果」なども、その代表例です。

こうした指摘を踏まえると、補講部分で著者が繰り返し述べているように、「どのようなエビデンスであっても、それを無条件に信じ込むことの危うさ」が浮き彫りになります。

専門家の発言や特定の研究結果には一定の信頼性があるにせよ、それをそのまま自分の教育実践に当てはめてしまうことには慎重であるべきです。実際、私たちは日常的に「専門家がそう言っているから」「エビデンスがあるから」といった理由だけで教育方針を判断してしまうことがあります。しかし、それが有効なのか否かは、対象となる地域や文化、学校現場の文脈によって大きく変わり得ます。

このことは、著者である西室氏自身の主張についても例外ではありません。どれほどエビデンスを重視する姿勢が理にかなっているとしても、そのエビデンスが生まれた条件や背景に目を向け、自分自身の視点で検証することが不可欠です。つまり、本書は「エビデンスの重要性」を説いていると同時に、「エビデンスの扱い方に慎重であれ」と警鐘を鳴らしているとも言えるでしょう。

以上を踏まえて、本書を次のように位置づけることができると思います。

『「学力」の経済学』は、教育における因果関係の視点やデータ分析の手法を紹介することで、従来の経験則や主観的判断に依存しがちだった教育議論に新たな軸をもたらした点で、大きな貢献がある。
しかし、エビデンス至上主義に傾きすぎると、教育が本来もつ多様性や柔軟性、そして人間の成長の不確実性といった重要な側面を見失う危険もある。
教育の本質に迫るには、データや因果関係を重視しつつも、それを盲信することなく、現場の文脈や子どもたち一人ひとりの特性に寄り添う柔軟な視点と、深い人間理解が求められる。

本書における参考文献 (一部)

  1. フライヤー教授が実施した米国5都市における実験の概要は、下記の文献を参照。
    (1)Fryer, R. G. (2011). Financial incentives and student achievement: Evidence from randamized trials. The Quarterly Journal of Economics, 126, 1755-1798.(2)Allan, B. M., & Fryer, R. G. (2011). The power and pitfalls of education incentives. Brookings Institution, Hamilton Project.(3)Greezy, U., Meier, S., & Rey-Biel, P.(2011). When and why incentives (don't) work to modify behavior. The Journal of Economic Perspectives, 25(4), 191-209. ↩︎
  2. ニューヨーク市立大のロドリゲス准教授の研究は、Rodriguez P. N. (2010). Mentoring, educational services, and economic incentives: Longer-term evidence on risky behaviors from a randomized trial. IZA Discussion Paper 4968, Institute for the Study of Labor. ↩︎
  3. ペリー幼稚園プログラムについて、ヘックマン教授にはあまたの業績があるが、左記のような論文が有名である。とくに、2006年の論文は、世界でもっとも権威のある学術誌であるサイエンス誌に掲載されたものである。(1) Heckman, J. J. (2006). Skill formation and the economics of investing in disadvantaged children. Science, 312(5782), 1990-1902.(2) Heckman J. J., Moon, S. H., Pinto, R., Savelyev, P. A., & Yavitz, A. (2010). The rate of return to the HighScope Perry Preschool Program. Journal of Public Economics, 94(1), 114-128.(3) Heckman, J. J., Moon, S. H., Pinto, R., Savelyev, P. A., & Yavitz, A. (2010). Analyzing social experiments as implemented: A reexamination of the evidence from the HighScope Perry Preschool Program. Quantitative Economics, 1(1), 1-46. ↩︎
  4. ヘックマン教授の業績について、一般にわかりやすい日本語文献としては下記のようなものがある。(1)大竹文雄(2008)「就学前教育の投資効果からみた幼児教育の意義━━就学前教育が貧困の連鎖を絶つ鍵となる━━」BERD,16. (2)広野彩子「『5歳までのしつけや環境が、人生を決める』━━ノーベル経済学者、ジェームズ・ヘックマン教授に聞く」日経ビジネスオンライン(2014年11月17日) (3)経済産業研究所「ノーベル賞経済学者ジェームズ・ヘックマン教授「能力の創造」」 ↩︎
  5. 長期的なペリー幼稚園プログラムの効果を推計した研究は、Schweinhart, L. J., Montie, J., Xiang, Z., Barnett, W. S., Belfield, C. R., & Nores, M. (2005). Lifetime effects: the HighScope Perry Preschool study through age 40. Ypsilanti: High/Scope Press. ↩︎