大学には、さまざまな専門分野の教員が在籍しており、それぞれが独自の研究テーマを持っています。そうした研究活動に対して、大学としてどのように支援するか、またどの程度の支援が可能かという点は、大学運営における重要な課題の一つです。

一般的には、各研究者に基盤的な研究経費が限られた範囲で配分され、それ以外の研究資金については、科学研究費補助金(いわゆる「科研費」)やその他の競争的資金を、各自が主体的に獲得する必要があります。大学にとっても、教員が科研費を取得すれば間接経費として大学に一定の収入が入るため、科研費獲得を積極的に後押しする体制づくりが求められます。

実際、多くの大学では、科研費の申請書の書き方や申請のコツをまとめたマニュアルを作成したり、科研費の獲得実績が豊富な教員による説明会を開催したりするなどの支援策を講じています。

私が香川大学で研究企画担当の副学長を務めていた際にも、科研費獲得支援に力を入れていました。説明会の開催に加え、科研費の申請経験が豊富な教員をアドバイザーとして配置し、申請書の原案に対して具体的な助言を行う仕組みも整備しました。申請書の内容を他者の視点から見直すことができるこの仕組みは、多くの教員にとって大きな助けになったように思います。

また、大学独自の研究支援策として、香川大学の個性を打ち出すための補助金制度も設けました。当時の長尾省吾学長は「融合」というキーワードを重視しており、異なる分野の教員が連携する共同研究に対して、数百万円単位の研究費を支援する制度を導入しました。分野横断的な研究を促進することで、大学としての独自性や研究の広がりを生み出す狙いがありました。

さらに、当時は文部科学省から各国立大学に対して「ミッションの再定義」が求められており、各大学が自らの強みや特色を再確認し、それを活かした改革を進める必要がありました。私は研究企画担当副学長として、学内の全教員の研究分野・研究テーマ・科研費の取得状況などの情報を一元的に整理し、研究戦略を立てるための基礎資料として活用していました。この資料により、学部・学科を超えた全学的な研究の強みや重点分野を一目で把握することが可能となり、大学としての研究戦略の方向性を定めるうえでも大きな助けとなりました。