
(出典:コンラッド東京のフェイスブック)
2025年7月25日のNHKラジオ「ビジネス英語」では、コンラッド東京の総支配人、ニール・マッキネス(Neil McInnes)氏へのインタビューが放送されました。
1978年、イギリス・スコットランド生まれのマッキネス氏は、1995年にヒルトン・グラスゴーに入社し、レストランやフロントスタッフとしてキャリアをスタート。2010年に来日し、コンラッド東京やヒルトン東京の副総支配人、ヒルトン東京ベイの総支配人などを経て、2017年からコンラッド東京の総支配人を務めています。
このインタビューの中で、彼が語ったキャリア形成に関するアドバイスがとても印象的でした。私自身の経験にも重なる部分があり、特に共感した次の言葉をご紹介します。
"One of the things I'm asked often by people that are looking to take the next step, whether that's promotions to supervisor or managers in the hotel, or whether that's to take the big step up to be general manager...
I always tell each candidate that they would never tick all the five boxes for the position.
No one is ever ready for the next step, so to speak, because you never know what's around the corner in that role.So I encourage everyone to step up and say that if you tick three or four of the five boxes, then that's good enough.
And that's what sort of guided me in the past years when I've took on the different roles.
I was never ready, but I always had the support and encouragement from my role models, and that's what I encourage today when people are taking the next step."
以下はその翻訳です:
「ホテル内でのスーパーバイザー職やマネージャー職への昇進であれ、総支配人になるために大きな一歩を踏み出すことであれ、次の段階に進もうとする人たちからよく相談を受けます。
私がいつも伝えるのは、その役職に求められるすべての条件を満たせる人なんて、ほとんどいないということです。
どんな役職にも、予想できないことがあるのですから、誰もが“準備万端”というわけにはいきません。だから私は皆さんにこう言っています━━もし5つの条件のうち3つか4つを満たしているのなら、それで十分だ、と。
私自身、いくつもの役職を引き受けてきましたが、完全な準備ができていたことは一度もありませんでした。
それでも、私のロールモデルたちが支えてくれましたし、今では私も、次のステップに進もうとする人にそうした支援と励ましを送っています。」
つまりマッキネス氏は、「完璧を待つより、ある程度の準備ができたら挑戦すべきだ」と語っているのです。
この考え方には、私も深くうなずかされました。
私自身、過去に突然「広報室長に就いてほしい」と言われたことがあります。それまで広報の知識も経験もなく、不安だらけでした。ある先輩からは「それはチャレンジングだね」と言われ、プレッシャーも感じました。それでも別の先輩は「大丈夫、なんとかなるよ」と励ましてくれたのです。
実際に広報室長としての仕事が始まると、新聞、テレビ、通信社などとの日々の対応が欠かせなくなりました。とにかく、正確で新しい情報を求められる日々。週に2回の大臣会見の直前には、「今日はこういった質問が来そうです」と大臣に伝えることも重要な役割でしたし、会見後にはその内容を事務次官や総務課長に報告するなど、神経を使う業務が続きました。
最初は戸惑うことも多かったものの、次第に慣れていき、記者一人一人の名前や性格も把握できるようになり、過度に刺激することなく情報を提供するコツもつかめてきました。不祥事が起きたときには、記者が記者会見を強く求める場面もありましたが、秘書官と連携して対応し、本省と報道陣との間でバランスをとることに努めました。最終的には、どちらからも信頼を得ることができたのではないかと思います。
このように、マッキネス氏の語る「5つの条件のうち、3つか4つが満たせれば十分」という考え方は、私の経験にも通じます。すべてが整う日を待っていては、いつまでたってもステップアップできません。「ポストが人を育てる」という言葉もありますが、それは現実に多くの場面で成り立つのだと、あらためて実感しています。
新しいポジションや役割に不安を感じている方にこそ、マッキネス氏の言葉は響くのではないでしょうか。完全な準備ではなく、“ある程度の備え”があれば、一歩踏み出す勇気こそが、次の成長への扉を開いてくれるのだと思います。