
国立大学と私立大学の大きな違いの一つに、「施設設備費」の扱いがあります。私立大学では、授業料とは別に「施設設備費」や「教育充実費」として、学生から相応の額を徴収しています。一方、国立大学では、そうした費用を学生から徴収することはしておらず、施設整備に必要な予算は基本的に文部科学省への予算要求によってまかなう仕組みです。
かつては、文部科学省の側にも一定規模の予算があり、全国の大学に対してある程度バランスの取れた配分が可能でした。しかし現在では、国の財政状況が厳しさを増し、本当に差し迫った事情がある場合にしか予算がつかなくなっています。たとえば、老朽化が著しい建物や、耐震補強が急務とされる施設には予算がつくものの、単に築年数が古いという程度では、なかなか優先順位が上がらないのが現状です。
もちろん私立大学でも、施設の整備には多額の費用がかかり、決して簡単な問題ではありません。それでも、減価償却に応じた資金の積立や、基本金の充実、さらには銀行借入なども活用しながら、長期的な視点で施設の更新や充実を進めています。
学生にとって、学ぶ環境の快適さは非常に重要です。オープンキャンパスでは、教室や図書館だけでなく、学生が普段使うトイレまで、細かく見て回る人も多いでしょう。最近では、多くの大学が「トイレの清潔さ」ひとつにも気を配り、キャンパス全体の印象づくりに力を入れています。
施設は大学の「顔」。しかし、その裏側では、限られた財源の中で、日々頭を悩ませながら整備を進めているという現実があるのです。