
国際交流の現場では、「これくらいは常識だろう」と思っていることが、必ずしも共有されていないことがあります。たとえば、台湾、香港、マカオを「独立した国」だと思い込んで発言してしまう人がいるのには、驚かされました。
東京2020オリンピックでは、「206の国・地域等から約11,000人の選手が参加」と報道されました。あえて「国」ではなく「国・地域等」という表現が使われているのは、政治的背景や国際的な認識の違いに配慮した結果です。このような言葉の選び方の背景にまで目を向けることが、国際交流に携わる者には求められます。
また、交流相手国の歴史や、その国と日本との関係についての基本的な知識も不可欠です。たとえば韓国との関係で言えば、豊臣秀吉による朝鮮出兵や、日韓併合、植民地時代などについての理解は欠かせません。高校時代の歴史教科書を、あらためて読み返してみるのも有効です。
韓国では、こうした歴史について、日本との関係を中心にかなり詳しく教えられています。その内容は当然ながら韓国側の視点から描かれており、日本人とは異なる認識があることも多いでしょう。そうした背景をふまえ、韓国の人々が日本や日本人に対してどのような感情を抱いているのかを理解することが、交流の出発点となります。そのうえで、未来志向で関係を築いていくことが大切です。
もうひとつ大切なのは、多様性を尊重する姿勢です。国や地域が違えば、文化・歴史・生活スタイル・価値観も異なります。共通点もあるかもしれませんが、違いこそが交流の醍醐味でもあります。
たとえば、韓国ではご飯茶碗を持たずに食べるのが普通ですが、日本では茶碗を持ち上げて食べます。また、韓国の食事会では割り勘をせず、1人がまとめて支払うのが一般的です。このような文化的な違いを理解し、柔軟に受け止める姿勢が求められます。
では、言葉の壁はどう乗り越えるべきでしょうか。多くの国で英語教育が行われており、国際交流の場でも英語が共通語になることが多いでしょう。
英語については、アメリカ英語やイギリス英語だけでなく、それぞれの国で話される “なまり” や表現もあります。日本人にとっても、多少の発音や文法のミスを恐れず、堂々と話すことが大切です。大事なのは、完璧な英語よりも「何を伝えるか」です。
国際交流は、一方的な知識や文化の押しつけではなく、相互理解と対話の積み重ねです。そのためにも、相手の歴史や文化を知る努力、そして多様性を受け入れる柔軟性が何よりも求められるのです。