
大学には、毎年ほぼ同様の使途に充てられる定型的な経費がありますが、それとは別に、学長のリーダーシップで柔軟に活用できる「学長裁量経費」を設けているところも少なくありません。ただし、「裁量」とは言っても、学長が自由に使える予算の枠はそれほど大きくなく、実際には各部局からの提案を募り、その中から優れたものを選んで配分しているケースが多いのではないでしょうか。
このような提案の選定方法は大学によってさまざまですが、私が関わった大学では、学長や理事らが出席する場で、各部局長が自らプレゼンテーションを行い、その後の質疑応答を経て、学長および理事が投票によって評価を行い、得点の高い提案を採択する方式を採っていました。プレゼンの巧拙が採否を左右する面は否めませんが、それ以上に重要なのは、学長や理事が日頃から学内の事情をどれだけ把握しているかです。
別の大学では、学長裁量経費ではないものの、当初予算を部局ごとに配分した後、年度途中で追加予算の申請が可能な仕組みがありました。追加申請は役員会の了承が前提となっていましたが、実際には、長年その職にある筆頭理事や事務局長が学内事情を熟知していたため、部局側は事前にこの両名に説明に行き、了解を得たうえで役員会に臨むのが通例となっていました。
このやり方は一見すると意思決定が迅速で効率的に見えますが、筆頭理事の意向と異なる方向性の提案は、たとえ内容が優れていても採択されにくいという側面もあります。組織としての透明性や多様な視点を尊重する観点からは、一定の課題をはらんでいるとも言えるでしょう。