平成29年(2017年)5月にまとめた資料です。それから6年過ぎていますが、傾向はあまり変化していないと思います。「諸外国の青少年教育施設等調査」報告書(平成25年3月、国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター)に詳細に記述されていますが、それをもとに、わかりやすくまとめなおしたものです。分析については、私が個人的に行ったものです。

諸外国の青少年教育施設の現状

ドイツ

①バイエルン州ホーエネック城青少年教育施設

ベッド数77(個室19、2人部屋7、4人部屋2、5人部屋1、6人部屋4、7人部屋1がある。全34室)
●セミナー室8室、キャンプ場30テント
●利用料金 一泊食事つき 24.00~42.84ユーロ
●利用者数6,866人、利用者宿泊数16,581人
スタッフ数20人 (3人がフルタイム、17人が時間雇用)
・指導部1人:館長1(社会教育士も兼ねる)
・教育部2人:社会教育士2
・総務部3人:帳簿係1、人事係1、宿泊受付係1
・財務部12人:財務部長1、財務係1、清掃・給仕係8、職業訓練生1、補佐1
・施設部3人:施設管理係1、用務員1、非軍事的役務者1
●事業例
・職員研修
「青少年指導者カード所有者のグループ指導研修」2泊3日 45ユーロ
「子供たちとともに映像を作る」2泊3日 20ユーロ
「話はどこにでもあるー文学・本の工房:児童・青年との活動」4泊5日 170ユーロ
・休暇期間中のセミナー
「ハリウッドショウタイム」(12~15歳対象)5泊6日 115ユーロ
「南海の魔法」(8~11歳対象)5泊6日 150ユーロ
・学校の生徒対象の青少年教育
テーマ:職業選択・申請、チーム活動、創造的な問題解決、学びを学ぶ、青少年は援助を求めている、性教育、暴力への対応について
・現代的課題に対応した事業
「公正―生活―学習」ギムナジウムの6年生対象、5日間

②バイエルン州ケーニッヒスドルフ高原青少年教育施設

ベッド数95(個室9、2人部屋9、3人部屋11、4人部屋6、5人部屋2)
●セミナー室8室、キャンプ場600テント分
●利用料金 1泊食事つき 29.50~40.00ユーロ
●利用者数13,220人、利用者宿泊数56,124人
スタッフ数49人
・指導部2人:館長1(社会教育士も兼ねる)、財務・人事担当1
・教育部14人:社会教育士2、保育士1、環境問題担当1、家族問題の相談2、文化教育担当1、家族の問題のプロジェクト指導者1、父母の時間担当2、実習生3
・総務部9人:受付・秘書1、セミナー管理1、施設保守3、職業訓練生1、非軍事的役務者1、連邦ボランティア活動実施者1、その他1
・財務部25人:財務部長1、食堂担当1、食堂・清掃担当6、清掃担当4、実習生1、職業訓練生5、キャンプ援助1、食堂・清掃担当援助6
●事業例
・職員研修
 基礎コース:ボランティアのための講習・研修
  青少年指導者カード講習、青少年センターでの活動、ユースワークの基礎など
 専任職員・ボランティアのための研修
  対立処理・調停、機会としての多様性(異文化間学習)など
・学校関連青少年教育
 チューター、相談員などの研修
 学校のクラス対象の研修
 コミュニケーション・共同トレーニング、プロジェクト・プレゼンテーションなど
・現代的課題に対応したモデル事業

イギリス

①ダーウェント・ヒル野外教育センター

●野外教育センター 宿泊室18室 ベッド数 72ベッド(子供用)100ベッド(同伴スタッフ用)、食堂3室、レクリエーションルーム3室
●研修センター   27ベッド、会議室、食堂
●延べ年間宿泊者数
・野外センター利用者数 4,088人
・子供3,629人、同伴のスタッフ(主に教師やユースワーカー)459人
・研修センター利用者数 2,244人(主な利用者は大人)
スタッフ数32人
●事業例
・家族の冒険休日:学校の夏季休暇中に実施するコース、6泊7日
大人400ポンドから、子供(12~15歳)325ポンドから、子供(8~11歳)308ポンドから
冒険活動:カヌーやカヤック、セーリング、ロック・クライミングやアプザイレン(懸垂下降)、ギール・スクランブリング(木立に覆われた渓谷をロック・クライミングと異なり装備を用いずに登る)や渓谷下降、登山、オリエンテーリング、ロープコース、空中ブランコ・ジャンプ、ビッグ・スウィングなど
・レクリエーション週末(大人14人以上から利用可)
「冒険の週末」:2泊3日のコース 一人当たり191ポンド(11~3月)、229ポンド(4~10月)
「活動及び社会的週末」:2泊3日のコース 一人当たり149ポンド(11~3月)、185ポンド(4~10月)
「社会的週末」:2泊3日のコース 一人当たり118ポンド(11~3月)、142ポンド(4~10月)

②ロウ・バンク・グラウンド野外教育センター

●宿泊室14室 収容数52人
●延べ年間宿泊者数 2,800人
●延べ年間日帰り施設利用者数 150人
●開館日数 355日
●利用料金 4泊5日で220ポンド(子供)
スタッフ数11人常勤10、非常勤1)
センター長1、副センター長1、シニアチューター1、現場マネージャー1、統括補佐3、料理人1、実習生1、フリーランスチューター2
●事業例
小学生向けプログラム、中等学校及びカレッジ向けプログラム、ジョン・ミュアー「ディスカバリー」アウォード、特別ニーズコース、教師中心コース、週末コース、特定の興味コース、長期休暇中の平日利用
●活動
渓谷や森の散策、登山、オリエンテーリング、ロック・スクランブリング(両手を使うがロック・クライミングのような装備を用いないで登ること)、カヌー、カヤックなど

③ハイ・ボラン野外教育センター

●宿泊室9室 収容数55人子供48人、スタッフ7人) 
●延べ年間宿泊者数 2,516人(子供2,237人、スタッフ279人)
●延べ年間日帰り利用者数 51人
●開館日数 355日
●利用料金 宿泊料1日43.5ポンド
スタッフ数13人常勤10、非常勤3)
●事業例
月~金の4泊5日コース、金~月の3泊4日コース
ロープワーク、課題解決ワーク、湖水でのカヌー、オリエンテーリング、ケービング(洞窟探検)、沢渡り、ギール・スクランブリング、登山、アプザイレン、カヌーでの旅、教科書横断型の野外活動、地理学と生態学のフィールドワーク

④アラン野外教育センター

●ベッド数11ベッドルーム 収容人数44人
●研修室5、クライミングウォール、山小屋、野外キャンプ施設
●利用料金
子供向けコース 平日5日間のコース 子供150ポンド
一般向けコース 6日間のコース 865ポンド
●年平均利用者数 子供1,200人 その他(同伴スタッフや大人)300人
●開館日数 337日 年平均稼働率75%
スタッフ数15人
センターマネージャー1、副マネージャー1、会計1、指導者5、夜間の守衛2、料理人2、清掃員2
●事業例
宿泊型野外教育以降支援コース:対象11歳
若者のためのリーダーシップ・アカデミー:対象11~16歳

フランス

①グランキャンプ・メシー

●34部屋 120のベッド
●対象年齢 6~12歳
●費用 7日間372ユーロ(7月のプログラムの例)
●ヨット体験、手芸教室キャンプ、漁港訪問、魚の競売体験、釣りなど
スタッフ25人

②ベルネ

●17部屋 50のベッド
●対象年齢 6~12歳
●費用 14日間823ユーロ(7月のプログラムの例)
●ラフティング、太陽光式船によるレマン湖周遊、レマン湖付近でのキャンプ、川遊び

アメリカ

①キャンプ・ワイモコ

●15~16人用の木造キャビンが12棟 190人
●ダイニングホール1棟、池、ネイチャーセンター1棟、浴室棟2棟、ヘルスロッジ1棟、売店1棟、スタッフ棟1棟、工作室2棟、キャンプ・ファイヤ場、乗馬やアクティビティ用芝生、動物及び家畜飼育施設、馬小屋、運動場
●営業期間は4月1日~11月1日
●年間利用者数(日帰り)1,425人、年間宿泊者数1,604人
●週単位のキャンプ・プログラム 参加基本料金270ドル
スタッフ数 常勤64人、非常勤ボランティア1人
●事業例
「酪農分野の青少年のキャリア人材育成のキャンプ」5泊6日
酪農ツアー、乳牛などの家畜の状態鑑定、測定技術、子牛の世話、施設デザインと管理、アイスクリーム製造、検死技術、蹄の手入れ、酪農の協同組合と政策など  

韓国

①中央青少年修練院

●宿泊人数 1,080人
●本館(講義室18、討議室12、事務室など)、大講堂(800席)、国際会議場(300席)、生活館(青少年84室、指導者155室、家族50室)、食堂(570席)、国際交流館(展示室、UN事務室など)、体育館(室内水泳場、バスケットボール/バレーボール、スキューバダイビング、中講堂(250席)、野営共演場(野外客席1,000席、マルチメディア室、楽屋)、野営場(300人受容)、営農体験施設(温室、野草・ハーブ団地)、その他施設(天文台、陶芸室、民族館、野外体験上場、マウンテン・バイク、営農体験、カフェテリアなど)
スタッフ67人(院長1、活動運営本部26、顧客支援部20、運営管理部20)
●年間利用人数 89,520人
●小中高の学生を対象とした師範修練活動、青少年対象の特性化キャンプ、家族キャンプ、青少年文化祭りなどを実施
●事業例
「変化された私、変化された我々」(リーダーシップ能力向上プログラム) 中学生40人、2泊3日
なぜリーダーシップ? 責任感とリーダーシップ、意思決定能力向上のための疎通リーダーシップ、自信感とリーダーシップ、我々のリーダーシップ

②平昌(ピョンチャン)青少年修練院

●宿泊人数 1,188人
●本館(事務室、大講堂(694室)、小講堂、天文台)、生活館(客室79室、食堂(500席)、丸木小屋(45室)、大運動場(サッカー場、ウレタン陸上トラック、多目的球場など)、野営場(50人受容)、営農体験施設(野草・ハーブ団地、家族活動農場、ビニール・ハウスなど)、その他施設(冒険施設、協同訓練場、登山路、森体験場など)
スタッフ47人院長1、活動運営本部20、顧客支援部14、運営管理部12)
●年間利用人数 116,960人
●冒険活動、自然・森の体験、トレッキングなど、地域の特徴を生かした野外活動中心の特性化キャンプを実施。その他、家族キャンプ、青少年野営大会なども実施。

③高興(コフン)宇宙体験センター

●宿泊人数 300人
●体験活動館(宇宙体験館、マルチメディア上映館、食堂、展示ホール、ゼミ室2室)、生活館(2人室8室、4人室54室、多目的室192室)
野外施設(タイムカプセル広場、チャレンジコース、野外展示場、宇宙人村、ロケット発射場、生態学習場)、その他施設(天文台、陶芸室、民族館、野外体験場、マウンテン・バイク、営農体験、カフェテリアなど)
スタッフ38人院長1、宇宙活動部19、顧客支援部12、運営管理部6)
●年間利用人数 22,700人
●宇宙をテーマとした特別支援プログラムを実施

中国

①北京市青少年戸外体育活動営地

300人宿泊の客室、200人収容のキャンプ場
●12月中旬から3月中旬まで閉営期
スタッフ数 20人常勤)
●年間予算額3,000万元 政府からの補助10%、自己負担90%
●野外活動
野外オリエンテーリング、徒歩、登山、キャンプ、アウトワード・バウンド、生存能力訓練(無人島生存)、岩登り、カヌー、軍事訓練体験など
●事業例
1泊2日、240元(食事を含む)
・大地震が発生したあと、様々な人と一緒に生活するという想定
・友達と山登りを行い一泊の野外キャンプを想定

②上海東方緑舟青少年校外活動営地

6,000人の宿泊施設、平均1日3,000人程度の宿泊者がいる
スタッフ 500人

●年間運営予算 1億元(約14億円) 政府からの支援金2,000万元、学生がプログラムに参加する収入1,000~2,000万元、残りの6,000~7,000万元は受託企業
●上海市の高校1年生は必ず東方緑舟で4泊5日のプログラムに参加しなければならない。 
●ある高校の体験プログラム 4泊5日、参加費350元(学生負担210元、政府負担140元)
生活案内、緑舟劇場で入営式開催、オリエンテーリングと素質、テストプログラム、チームワーク作りのためのネイチャーゲーム、テント張り体験、野外生存講義、ロープの使用方法、野外救急方法、防災訓練・止血・包帯の使用方法、映画鑑賞、心臓蘇生方法等救急知識を学ぶ、国防体験訓練、銃の持ち方・射撃体験、伝統文化京劇鑑賞、終了式と表彰式

③上海市普陀青少年戸外体育活動営地

●所有野外営地5か所
スタッフ 140人
●年間予算2,000万元 政府からの支援は10%
●事業例
「快楽週末プログラム」毎週金曜日午後 参加費60元(実際は学生の負担なし)
岩登り、国防体験、水泳、武術、少林拳、ヨガ、ダンス等

諸外国と日本との青少年教育施設の比較

施設の規模、スタッフ数等

●ヨーロッパやアメリカの場合は、40~200人規模の宿泊施設で、スタッフは10~60人。1週間程度のプログラムに参加し、料金は3万~10万円。
●韓国の場合は、300~1,000人規模の宿泊施設で、スタッフは40~70人。1泊2日の場合、料金は1,000~3,000円。
●中国の場合は、300~6,000人規模の宿泊施設で、スタッフは20~500人。5日程度のプログラムに参加し、料金は3,000円程度。
●日本の国立施設の場合は、一般的に、300~400人規模の宿泊施設で、スタッフは15人程度。1泊2日の場合、料金は2,000円程度。

日本との比較

●日本は、欧米、中国・韓国と比べて、スタッフの数が少ない
●欧米の場合は、日本よりも高めに料金設定して、そこから運営経費を確保している。
●日本、中国、韓国の場合、学校単位で参加する場合が多く、様々な経済状況の子供たちがいるため、料金設定は低くせざるを得ない
●優秀なスタッフを十分な数だけ確保して、利用者が心から満足できる優れたプログラムを実施し、快適な施設環境を維持していくためには、より多くの予算が必要である。