グローバル化が進む今の時代、「英語が話せるのは当たり前」という考えが広まりつつあります。そうしたなか、「子どもには早いうちから英語に触れさせたい」「授業料が高くても、インターナショナルスクールに通わせた方が将来のためになるのでは」と考えるご家庭も少なくないでしょう。実際、有名人の子どもがインターナショナルスクールに通っていたという話を耳にし、自分たちも同じ道を選びたくなるかもしれません。

しかし、その前に知っておくべき重要な点があります。

文部科学省の見解によると、「学校教育法第17条第1項、第2項には、学齢児童生徒の保護者にかかる就学義務について規定されています。そこでは保護者は子を『小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部』、『中学校、義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部』に就学させると規定されています。よって、保護者が日本国籍を有する子を一条校として認められていないインターナショナルスクールに就学させたとしても、法律で規定された就学義務を履行したことにはなりません。」となっています。

さらに、「例えば一条校でないインターナショナルスクールの小学部を終えた者が中学校から一条校への入学を希望してきても認められないこととなります。インターナショナルスクールの中学部の途中で我が国の中学校へ編入学を希望する場合も同様です。」としています。

法的な問題だけではありません。私がより心配しているのは、文化的・人間形成的な側面です。

特に小学校・中学校の時期は、人間としての基礎的な価値観や、日本人としてのアイデンティティが育まれる重要な時期です。この時期に、日本の学校に通わず、外国籍の子どもが多く集まる環境で過ごすことで、日本社会とのつながりや文化理解の機会を失ってしまうおそれがあり得ます。

たとえば、日本の学校では「道徳」の授業を通して、

  • 誰に対しても思いやりの心をもち、相手の立場に立って親切にすること
  • 高齢者に、尊敬と感謝の気持ちをもって接することち
  • 我が国の郷土の伝統と文化を大切にし、先人の努力を知り、国や郷土を愛する心をもつこと

といった価値を学ぶ機会があります。インターナショナルスクールではこうした内容は義務教育の一環として組み込まれているわけではなく、学校によってはほとんど扱われない場合もあり得ます。「家庭で教えれば十分」と考えるかもしれませんが、家庭と学校の両輪での教育があるからこそ、社会の中で生きる力が育つのではないでしょうか。

さらに極端なケースですが、将来、子どもが日本社会にうまく適応できなかったとき、「なぜ自分を日本の学校に通わせてくれなかったのか」と親や教育委員会に不満を抱き、訴えを起こすという可能性も、理屈の上では否定できません。

もちろん、インターナショナルスクールには高い英語力や多文化的な視野が身につくという大きな魅力があります。ですから、法的に問題がないことを前提としつつ、将来的に海外での進学や就職を目指している場合など、家庭としての明確な方針があるなら、その選択は意味のあるものです。

しかし、「なんとなく英語ができたほうがいいから」「周囲が通わせているから」といった曖昧な理由だけで選ぶには、リスクも大きいのが現実でしょう。

子どもの将来のために何が本当に大切か━━英語力だけでなく、日本人としての文化的な基盤を育てることも忘れずに、慎重に考えていく必要があると思います。