
大学や独立行政法人には、重要事項を決定する場として役員会が設置されています。
とはいえ、役員会でいきなり案件が提示され、その場で即決されるというのは現実的ではありません。実際には、事前に時間をかけて調整が行われることが一般的です。
私の経験では、そのような事前調整の場は、週に1回程度のペースで開かれていました。そこでは、担当役員が非公式に案件を提示し、自由な意見交換がなされます。その中で修正すべき点が見つかれば、内容を練り直し、正式な役員会に諮る、という流れです。
国立大学の場合は、役員会のほかにも「教育研究評議会」や「経営協議会」といった組織の了承が必要になることが多く、同じような内容が何度も審議されることになります。もう少し効率的な運用ができないものかと、たびたび感じたものでした。
ある大学では、役員会において資料の説明から質疑応答まで、すべて担当役員が一手に引き受けるというスタイルを取っていました。そのため、私も担当者が作成した資料に隅々まで目を通し、どんな質問が来ても対応できるよう準備しました。外部役員の中には教育分野に専門性を持たない方もおられるため、思いもよらぬ視点からの質問も飛んできます。それでも誠実に、丁寧に答えてきました。毎回が冷や汗ものでしたが、なんとか乗り切ってきたというのが正直なところです。
多くの大学では、おそらく役員が概要を説明し、詳細については担当課長や部長が説明、質疑もその担当者が対応するというスタイルが一般的ではないでしょうか。これは、国会における政府参考人制度にも似ています。国会では、大臣や副大臣、政務官が答弁しつつ、詳細な技術的説明は局長クラスの政府参考人が担うことがあります。この分担方式のほうが、現場感覚にも合っており、安心感もあるように思います。
とはいえ、学長や理事長といった圧倒的な存在感を持つトップの前では、たとえ役員であっても、ましてや部長や課長の立場では意見を言いづらいという状況がしばしば生じます。私自身も、そのような雰囲気の中で、「少しおかしい」と思いながらも異論を出しづらく、そのまま決定に至ってしまったという経験があります。このような状況が長く続けば、組織は徐々に健全さを失い、やがて誰も軌道修正できなくなる恐れがあります。自戒の念も込めて言いますが、やはり風通しの良い組織を目指すことが何より重要だと思います。
また、大学の教員は皆、多忙です。会議を設定するだけでも一苦労です。ある大学では、会議日を特定の曜日━━たとえば火曜日━━に集中させる運用をしていました。その日は朝から晩まで会議が詰まりますが、他の曜日は比較的自由が利くため、結果として仕事の見通しが立てやすく、よい工夫だと感じました。