2023年(令和5年)8月29日の朝日新聞に、国連大学学長チリツィ・マルワラ氏のインタビュー記事が掲載されていました。そこで、興味深い話がありましたので、紹介します。

「私は、まだ近代化が進む前のふるさとの村で、祖父母の家で育ちました。私の祖母は読み書きはできず、英語も話せませんでしたが、自然に関しても人間に関しても深い知恵に満ちた人間で、ケンブリッジ大学でも受けられないような教育を受けたと思っています。毎朝5時か6時には、きまって近所の人が私と同じ部屋で寝ていた祖母のところにやってきて、さまざまな話をしていきました。村の共同体の中での不満や、近隣の民族の問題など、あらゆる情報が毎朝祖母の所に集まっていました。

「いま、フェイクの情報がコンピューターのネットワークにあふれるようになっています。何が本当かを見極める大切さを、あのとき浴びた光が身につけさせてくれていたように当時から思っています。東京でも、祖母の肖像を学長室の壁に飾って、背後からいつも見つめてもらっています。将来の世界を決めるのは、現在を生きている人間です。何とか、よい方向に進むように努力をしたいと思っています。」

AIを開発するには、ニューラルネットワークに大量のデータを与えて訓練する必要があるとのことですが、そのデータの集めようによっては偏ったデータになり、その結果として、偏った結論を導く可能性が出てきます。

そういった意味からも、「何が本当かを見極める力」を身につけることが大切であり、そのためにも自らさまざまなことを実際に体験することが重要ということだと思います。