2023年(令和5年)7月、ある政治家のフランス研修旅行が、「実態は観光旅行ではないか」と大きな批判を浴びました。週刊誌にはその日程表が掲載されており、私も目を通してみましたが、確かに観光的な要素が多く含まれている印象を受けます。

日程表を色分けしてみると、オレンジ色の部分が研修に該当すると考えられる内容でした。たしかに批判される面もありますが、完全に「観光旅行だった」と断定するのも難しいように思います。実際、一定の研修活動が行われている形跡も見られました。

初日
 8:25       羽田空港発
16:15       シャルルドゴール空港着
18:00       ホテル着
19:00~20:30 夕食兼結団式

2日目
 9:00       ホテル発
10:00~11:00 国民教育・青少年省レミ・ギュイユ氏からのブリーフィング
11:45 昼食
13:00~14:00 国民議会議員との面会
14:30~15:30 元老院議員との面会
15:30~16:30 元老院ガイドツアー
17:00~17:30 市内観光(エッフェル塔)
17:30~      自由行動
20:30~23:00 セーヌ河ディナークルーズ
23:45       ホテル着

3日目
 8:20       ホテル着
 9:00~10:00 保育園視察
10:10       ルーブル・ピラミッド前 集合・記念撮影
10:20       ルーブル前発
10:40~12:50 自由行動
13:00~14:00 昼食
14:40~15:40 CNAF ローラン・オルタルダ氏 講演
16:00~17:00 高崎順子氏 講演
18:00       在仏日本大使館主催アペリティフ
19:00~21:00 下川眞樹太在仏日本大使との夕食会
21:45       ホテル着

4日目
 8:50       ホテル発
 9:50~12:15 オペラ座にて記念撮影後、自由行動
12:30~14:20 昼食兼解団式
14:30       レストラン発
15:30       シャルルドコール空港着
19:00       同発

5日目
15:45       羽田空港着

とはいえ、せっかくのフランス研修であれば、現地の議員や関係者とより多く交流を深める機会を設けるべきだったのではないかという印象も否めません。たとえば昼食会や夕食会など、食事を共にする場は、実務的な会合とはまた異なる本音のやりとりができる貴重な機会になります。

私自身、文部科学省や国立大学に勤務していた際には、海外出張の機会も多くありました。その中で、訪問先の政府関係者や大学関係者と食事を共にすることは、ほぼ欠かせないプログラムのひとつでした。お酒を交えたカジュアルな場だからこそ、相手の考え方や本音をより深く知ることができ、親密な信頼関係を築くことにもつながりました。

もちろん、英語での会話は簡単ではありません。それでも、こちらの思いをしっかり伝えようと努め、相手からも貴重な情報を引き出すことができたという手応えは、今も強く記憶に残っています。こうした経験は、一般的な観光旅行では得られない、まさに「現地でしか得られない学び」だったと思います。

また、出張時には、朝早く現地の街を散策するのを習慣にしていました。限られた滞在時間の中でも、少しでも多く現地の空気に触れようという思いからです。こうした「時間を惜しんで現地を知ろうとする姿勢」こそが、海外出張を単なる訪問で終わらせず、真に意義ある研修にするために欠かせないと感じています。