本との出会いが人生を変えることがあります。とりわけ、青少年期に出会った一冊の本が、その後の価値観や進路、生き方に大きな影響を与えることは少なくありません。国立青少年教育振興機構では、青少年の健全な育成と教育関係者の学びを支えるため、情報基盤の整備にも力を入れてきました。その中核を担っているのが、「青少年教育情報センター」です。

情報センターの蔵書の充実

国立青少年教育振興機構本部に設置されている「青少年教育情報センター」では、国内外の青少年教育に関する書籍や、教育全般に関する資料など、数万点にのぼる蔵書を有しています。

私が在任中には、より多くの青少年や青少年教育関係者がこのセンターを利用しやすくなることを願って、以下のような観点から蔵書の充実を図ってきました。

情報センターで重点的に収集・整備した図書の分野
  • 日本および諸外国の青少年の活動、施設、団体等に関する図書(DVD等を含む)
  • 教育に関する図書(教育心理学・発達心理学を含む)
  • 青少年指導者の資質向上に資する図書(青少年教育の歴史、教育指導、安全対策、リーダーシップ等)
  • 青少年の健全育成に資する図書(歴史、社会、科学技術、芸術、古典など、思索を深めるための内容)
  • 国際交流に関する図書(異文化理解を含む)
  • ボランティアに関する図書(NPOに関する文献を含む)
  • 自然体験、社会体験、文化体験、読書活動などに関する図書
  • 青少年教育施設の運営に関する図書(広報活動に関する内容も含む)
  • 子どもが楽しめる書籍(絵本など)
  • その他、青少年教育全般に関する図書
「青少年に読んでもらいたい図書コーナー」の設置

近年、若者の活字離れが指摘されることもありますが、だからこそ、良質な本と出会う機会を意図的に設けることが重要です。私は、青少年期にこそ人生を深く考え、広い視野を育む読書体験が求められると考え、「青少年に読んでもらいたい図書コーナー」を情報センター内に設置しました。

東京大学やコロンビア大学などの資料を参考にしながら、流行に左右されず、古今東西で読み継がれてきた名著を中心に選書しています。以下はその一部です。関心をもたれた方は、ぜひ一度手に取ってみてください。

1.古典・哲学・思想の名著
  • 『国家』(プラトン)
  • 『詩学』(アリストテレス)
  • 『戦史』(トゥキュディデス)
  • 『神曲』(ダンテ・アリギエーリ)
  • 『君主論』『政略論』(マキアヴェッリ)
  • 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『職業としての学問』(マックス・ヴェーバー)
  • 『雇用・利子および貨幣の一般理論』(ケインズ)
  • 『方法序説』『省察』(デカルト)
  • 『エセー』(モンテーニュ)
  • 『教説と手紙』(エピクロス)
  • 『神の国』(アウグスティヌス)
  • 『統治二論』(ロック)
  • 『二コマコス倫理学』『政治学』『饗宴』(アリストテレス)
  • 『リヴァイアサン』(ホッブズ)
  • 『歴史』(ヘロドトス)
  • 『女の平和』(アリストファネス)

2.文学・演劇・物語の世界
  • 『リア王』(シェイクスピア)
  • 『オデュッセイア』『イリアス』(ホメロス)
  • 『ファウスト』(ゲーテ)
  • 『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)
  • 『ドン・キホーテ』(セルバンテス)
  • 『レ・ミゼラブル』(ヴィクトル・ユゴー)
  • 『一九八四年』(ジョージ・オーウェル)
  • 『アンナ・カレーニナ』(トルストイ)
  • 『イワン・デニーソヴィチの一日』(ソルジェニーツィン)
  • 『夜の果てへの旅』(セリーヌ)
  • 『魔の山』(トーマス・マン)
  • 『百年の孤独』(ガルシア=マルケス)
  • 『こころ』(夏目漱石)
  • 『塩狩峠』(三浦綾子)
  • 『外套』(ゴーゴリ)
  • 『山月記・李陵』(中島敦)
  • 『竜馬がゆく』(司馬遼太郎)
  • 『蒼穹の昴』(浅田次郎)
  • 『高野聖』(泉鏡花)
  • 『春の戴冠』(辻邦生)
  • 『三国志』(吉川英治)
  • 『幼年期の終わり』(アーサー・C・クラーク)

3.科学・数学・技術・自然
  • 『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン)
  • 『生命とは何か』(シュレーディンガー)
  • 『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(ファインマン)
  • 『パワーズ・オブ・テン』(モリソン)
  • 『医学の歴史』(梶田昭)
  • 『ホーキング、宇宙を語る』(ホーキング)
  • 『宇宙は何でできているのか』(村山斉)
  • 『エレガントな宇宙』(グリーン)
  • 『ワンダフル・ライフ』(グールド)
  • 『植物は何を見ているか』(古谷雅樹)
  • 『磁力と重力の発見』(山本義隆)
  • 『自然界における左と右』(ガードナー)
  • 『ヒトは食べられて進化した』(ハート&サスマン)
  • 『物理学とは何だろうか』(朝永振一郎)
  • 『文系のための生命科学』(東大生命科学教科書編集委員会)

4.社会・歴史・文化・教育
  • 『ベスト&ブライテスト』(ハルバースタム)
  • 『アフリカ──苦悩する大陸』(ゲスト)
  • 『ルワンダ中央銀行総裁日記』(服部正也)
  • 『チベット旅行記』(河口慧海)
  • 『沈黙の春』(レーチェル・カーソン)
  • 『夜と霧』(フランクル)
  • 『オリエンタリズム』(エドワード・サイード)
  • 『精神の生態学』(グレゴリー・ベイトソン)
  • 『高校生のための東大授業ライブ』(東京大学教養学部編)
  • 『疾病と世界史』(マクニール)
  • 『民族という虚構』(小坂井敏晶)
  • 『歴史とは何か』(E.H.カー)
  • 『銃・病原菌・鉄』(ジャレド・ダイアモンド)

5.思考法・哲学・論理・認知
  • 『理科系の作文技術』(木下是雄)
  • 『知的複眼思考法』(苅谷剛彦)
  • 『アイデアのつくり方』(ジェームズ・ヤング)
  • 『アフォーダンス』(佐々木正人)
  • 『誰のためのデザイン?』(ノーマン)
  • 『フォークの歯はなぜ四本になったか』(ペトロスキー)
  • 『言語の脳科学』(酒井邦嘉)
  • 『統辞構造論』(チョムスキー)
  • 『ゲーデル、エッシャー、バッハ』(ホフスタッター)
  • 『システムの科学』(サイモン)
  • 『論理哲学論考』(ヴィトゲンシュタイン)
  • 『オイラーの贈物』(吉田武)
  • 『無限と連続』(遠山啓)
  • 『論理トレーニング101題』(野矢茂樹)
  • 『科学革命の構造』(クーン)
  • 『知の技法』(小林康夫)
  • 『日本人の英語』(ピーターセン)
  • 『本はどう読むか』(清水幾太郎)
  • 『レトリック感覚』(佐藤信夫)

6.自己・生き方・社会参加
  • 『堕落論』(坂口安吾)
  • 『選択の科学』(シーナ・アイエンガー)
  • 『リーダーシップとは何か!』(ハイフェッツ)
  • 『愛するということ』(エーリッヒ・フロム)
  • 『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)
  • 『自分の中に毒を持て』(岡本太郎)
  • 『生きがいについて』(神谷美恵子)
  • 『自分のなかに歴史をよむ』(阿部謹也)
  • 『人間臨終図巻』(山田風太郎)
  • 『理系のための研究生活ガイド』(坪田一男)

7.漫画・若者向け・入門書など
  • 『もやしもん』(石川雅之)
  • 『夕凪の街 桜の国』(こうの史代)

結び

青少年の読書は、その人の将来を照らす羅針盤にもなり得ます。情報が溢れる現代だからこそ、自分で思考し、価値を見極める力が一層求められています。青少年教育情報センターの蔵書が、そのような力を育む一助となれば、これほど嬉しいことはありません。