国立大学では、長年教員として勤め上げた人物が学長に就任するケースが一般的です。そして多くの場合、その学長は自分と志を同じくする人物を理事や副学長として登用します。当然ながら、その人選は同じ大学の教員の中から行われることがほとんどです。

しかし、同じ組織に長く所属していると、その独自の風土に染まり、慣習や仕組みを「当たり前」として受け入れてしまいがちです。教授会の進め方、予算の編成手順、学部と執行部の関係、教職員間の距離感、研究費の配分、さらには文部科学省への予算要求のスタイルに至るまで、長年のやり方が既成事実として定着しています。

国立大学の場合は、長く教員をしていた人が学長になるケースが多いです。そして、学長は自分に協力してくれそうな人材を集めて、理事や副学長にします。当然のことながら、同じ大学の教員の中から選ぶことになります。

加えて、実務を支える大学職員も多くが生え抜きで、他大学の事情にはあまり通じていません。文科省が新たな政策や方向性を打ち出しても、補助金など自分たちに直接関係する部分以外は受け流されてしまうこともしばしばです。

けれども、自分たちには「当然」に見える仕組みや対応が、外部の視点からは非効率であったり、時代にそぐわなかったりする場合もあります。たとえば予算の配分方法、会議資料の作成、議論の進め方、経営陣と教員の関係性など、私自身、改善の余地を感じた場面は何度もありました。

一方、民間企業では、社外取締役を置いて経営に外部の視点を取り入れることが一般的です。社外取締役は社内事情に精通しているわけではありませんが、だからこそ、内部の人が気づかない問題点を指摘したり、新しい視点から建設的な意見を出したりすることができるのです。

国立大学に限らず、公立大学や私立大学においても、組織の硬直化を防ぎ、活性化を促すためには、優秀な外部人材を経営陣に加えることが不可欠です。内部の常識にとらわれない「新鮮な目」で大学を見直すことは、変化の時代に対応するうえでますます重要になっているのではないでしょうか。